2007年2月16日
大人のためのロボット学
最近読み直した本。
たぶん去年の春に買ってすぐに読んだんだけど,なんとなくまた読み返す。
そしてやはり面白い。
で,ロボカップ。
ロボカップ国際委員会の浅田さんの話を読んでて,いつだったか見たテレビ番組をふと思い出した。
その番組ではスポーツが得意な人はロボットのように正確に同じ動作ができる,ということを報告していた。
確か中国雑技団の人と,卓球の何かの大会のチャンピオンと,あと何人か忘れたけど,ともかくそれらスポーツが得意な人の動作を何回か録画して,重ね合わせるとみんな毎回ほとんど同じだった,というような話だったと思う。
実は,優秀なスポーツ選手というのは,
・あらかじめ定められたパターン通りに体を動かせる
・記憶しているパターンが多い
・プレー中の各状況にあわせてもっとも適切なパターンをすばやく引き出せる
という特性を持っているんじゃないだろうか,と思った。
他にも,これらの特性を生かすための特性として
・あまり繰り返し練習しなくてもパターンを記憶できる
・体を動かさなくても見ただけ,あるいは想像しただけでパターンを記憶できる
・良いプレーと悪いプレーを見分けられる
といったこともあるかも知れない。
チームプレー,例えばワンツーパスやスクリーンプレーなんかは,チームメイトがお互いパターンを知っていて,「この状況なら当然このパターンだろ?」とアイコンタクトすらせずにパターンに沿ったポジションに動けたりする。
フェイントもパターンを逆に利用した例と言える。
ただし,フェイント自体もパターンなので「そんなフェイクには引っかからねーよ」みたいなパターンもある。
1回目のフェイントでかかりが浅かったら,すぐに2回目のフェイントに入る,というパターンも当然ある。
かかりが浅いかどうかを見分けるのも,もちろんパターン。
パターンの記憶と再生は,ロボットが非常に得意とするところ(と言いたいけど,再生はコンピュータで音楽とかを再生する場合と異なって,実際には非常に難しいと思う)。
問題はやはり,状況に合ったパターンをすぐに引き出せるか,というところと,良いプレーを学習する(=悪いプレーは学習しない,あるいは悪いパターンとして学習する)というところじゃないかと思った。
ただ,思考というよりパターン認識だと思うと,もしかしたら今までとは違う何か別のアイデアも出てくるかもしれない。
あと,そんなこんなで想いをめぐらせていたら,ふと思ったことがある。
それはプロスポーツ選手のケガについて。
実際,シーズンを棒に振ったり,下手するとスポーツ人生に幕を下ろしてしまうようなケガというのも珍しくない話。
ただ基本的には良いパターンのシミュレーションしかしないし,ケガを負いそうなパターンというのは練習でもやんないから,現実にそういう場面が訪れても回避できないんじゃないかと。
もしかしたらケガしそうなパターンも(きりがないと言えばそうだけど)シミュレーションしておくと,スポーツ人生を長く歩めるんじゃないのかなと思った。
2005年3月 2日
アンドロイドの脳
最近読んだ本。
「アンドロイドの脳 人工知能ロボット"ルーシー"を誕生させるまでの簡単な20のトラップ」
めちゃくちゃ感動(というか興奮?)した。
この手の一般向け科学読み物では「ホーキング、宇宙を語る?ビッグバンからブラックホールまで」以来に興奮した(あいだ空き過ぎ)。
簡単に内容を紹介すると,「ルーシー」っていうロボットを作る過程で,脳の動き方・働き方について理解を深め,(あわよくば?)ルーシーに知性を持たせましょう,というプロジェクトの紹介というか説明。
なんていうか,目から鱗やらなんやらが落ちまくり。まあ,ワタシは影響されやすいほうなんでアレだけど。
これ読むと,例えば人間の脳からソフトウェア情報を取り出して保存しておくことで,ハードウェア(肉体)が朽ちてもロボット上に人格を再現でき,それで今までと同じく「生きている」ことになる,という(例えば,ルーディ・ラッカーの「ソフトウェア」とかのSFにあるような)のは,相当無理があるよなぁと思わざるを得ない。
人間の脳って,ソフトウェアだけ取り出せるような代物ではないのね。
この本の冒頭で,著者がコンピュータがあれば仮想環境を作り出せる,って言っているわりに,あくまでハードウェアにこだわって(仮想ロボットではなく)リアルロボットを作ろうとしているのも,読み進めるとなんとなく分かる気がする(完全に納得はしてないけど)。
知性を持った動物になるためには,周りの物体と相互作用を持たないと。周りからインプットをもらって,アクションをとってアウトプットを出し,さらにそれに対するフィードバックを得ないと。
さらに,人が,人としての知性を持った人となるためには,人と相互作用を持たないとダメなんだね。
うちのばーちゃんは,「よく成長したなぁ」という意味で「ひとなったなぁ」という表現を使ってたけど,これはどう考えても「人成る」でないかと思う。人は他人との相互作用でもって動物から人に成っていく。人と相互作用を持たないと人に成らんのね。オオカミ少年。
漠然と,今の世の中,知識はオンラインで無尽蔵に手に入るんだから,人並みの知性をもった人工生命をコンピュータ内に生み出すことは可能なんじゃないかと思ってたりしてた。けどこの本を読んで改めて,人間が赤ん坊にかまう時間ぐらいは人間がかまってやらないと,人並みの知性なんか身に付かないよなと思ったり(まして,赤ん坊の方がその辺のスーパーコンピュータより学習能力は高いので,もっとかまってやらないとダメだよな,とか)。
たぶん,詳細な実装のアイデアとしては,なんらかの配列の組み合わせを継続的に変化させていく,そしてそれらを相互作用させる,というあたりがおそらくベストに近いし,また現実にもかなり近いと思う。
「ルーディ・ラッカーの人工生命研究室 on Windows」(再びラッカーで恐縮)に登場するBopperのような,遺伝的アルゴリズム/遺伝的プログラミング(GA/GP)で進化するってのもそうかも知れないし,進化はしなくても成長すれば良いような気もする。
ただ,それぞれにどういう機能を持たせるか,どんな抽象度・粒度で組み合わせるか,どう組み合わせるか,とかっていうあたりの,より上位の部分が,ある程度目指すところに近くないと,それこそ「アメーバを進化させて人間にする」みたいな,途方もない時間が必要になってしまうんだろうと思う。
また,有機生物が化学反応の枠組みを超えられないのと同様に,ソフトウェアも,プログラマが基本要素として規定した枠組みは超えられない。ということは,ある程度,知性を持つために必要な枠というのを意識して初期段階で設計しておかなければならない。
だから,詳細な実装から進んで行く人も必要だし,上位の,より人間の脳の全体機能から見ていく人も必要……って,なんか当然と言えば当然か。
ともかく,個人的には今まで読んだSFの意味とかを考え直させてくれるきっかけが得られて,とてもよかった。
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアは「最後の午後に」って短編(「愛はさだめ、さだめは死」収録)の中で「人間は時間をたくわえる生き物なんだよ」とかって主人公に言わせてる。今までもこれで納得してたけど,所詮は「文明の蓄積がある」っていう程度の認識で,なんてゆうか,例えば猿の惑星と繋げて考えたことはなかった。地球上に3歳以下の子供しか残らないという状況が発生したら,仮に運良く彼らが成長できたとしても,猿と立場が逆転するかも知れない,なんてことは考えても見なかった。あくまで人間は人間,と。
でも,こう,人が人としてあるためには人と接触して人のやり方(たぶん手の使い方とかから)を学ぶ必要がある,となると,もし人がいない(3歳以下の「動物」しかいない)状況になってしまったら,猿の惑星みたいなことがじゅうぶん起こる気がする。
最初に人になったヤツは(「ルーシー」?)偉い。偉すぎる。
エンジニアの約4割,SF好きの約9割が人工生命に興味があると思われ(あ,適当に言ってみました),ぜひ他の人の感想も聞いてみたいところ。
音の認識とか絵の認識とかも書いてある。その分野の専門書はほとんど読んだことないけど,もしかしたら専門書とは違った知見が得られるかも知れないので,その辺を専門にしてる人にも読んでもらいたいなぁと思った。
あと,直接は関係ないけど,ちょっとググってて,このページの一番下のエントリがめちゃくちゃ気になった。ついこないだじゃん。
ウェブログ: ジコゾウ : 2005年4月 4日 18:48